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研究テーマ
人工知能が人間の知能を育んだり、人間の知能と人工知能が相互に補完し合ってより高度な知能を実現したりする方法を明らかにすることが、これまで以上に重要になりつつあります。認知行動支援技術チームでは、特に、社会生活を送る上で必要な人間の知能が損なわれる高齢者の認知機能低下と認知症を予防するために、認知予備力を高める認知行動支援技術を重点的に開発します。写真を用いた会話支援技術、共想法に立脚した会話支援AIを開発し、認知行動支援システムに実装し、人間の認知面、心理面に与える影響を評価します。

研究主分野
 工学
研究分野
 臨床医学 / 神経科学 & 行動科学 / コンピューター科学 / 心理学 & 精神医学 / 学際研究

研究課題
  • 高齢者の双方向コミュニケーションを支援する認知行動支援システムの開発
  • 会話、生理計測、心理検査データを解析しモデル化する技術の開発
  • 認知行動支援技術が人間に与える影響を評価する臨床研究

認知行動支援技術チームにおいて取り組む研究の基礎となる、チーム設立以前から取り組んできた研究課題は、「大規模会話データに基づく個別適合型認知活動支援」です。
大規模会話データに基づく個別適合型認知活動支援
Functional QOL Model高齢化の進展と共に、認知症患者数は急激に増加していますが、一旦発達した知能が加齢と共に衰える認知症を防ぐ薬は見つかっていません。本研究では、聞くことと話すことが情報の入力と出力の連鎖であるとする、会話における脳の情報処理モデルに着眼し、独自に開発した双方向会話支援技術を用い、大規模会話データを収集し、会話データから認知的な特徴を抽出する技術を開発し、個別適合可能な認知活動支援技術を開発しています。これまで医療看護領域の課題と考えられていた認知症の問題に、人工知能からのアプローチが有効であることを示し、学術的のみならず社会的に認識されるに至っています。急速な高齢化が進む国内外において、防ぎうる認知症にかからない社会の実現に寄与すると期待されます。

参考文献:
[1] 大武美保子.認知症から見る人間の知能と人工知能による支援,人工知能学会誌,Vol. 28, No.5, pp.726 - 733, 2013.
[2] 大武美保子.認知症の予防と支援に役立つ人工知能と高齢者とともにつくる認知症予防支援サービスの開発,人工知能,Vol 31, No.3, pp.363 - 370, 2016.
会話支援手法「共想法」と会話特徴量抽出技術の開発
Coimagination Method話すことすなわち情報の出力と、聞くことすなわち情報の入力をバランスよく行う会話を確実に発生させる支援技術、共想法を独自に開発しました。テーマに沿って話題と写真を用意し、持ち時間を決めてグループ会話する共想法への参加を通じ、健常高齢者の会話特性に変化が見られ、情報の入出力のバランスがよくなることを示した。ウェブデータベースと連携した共想法支援システムを開発し、全国各地の実施研究拠点で継続的に運用されることを通じ、高齢者の大規模会話データを収集することができました。
また、会話双方向性計測法、会話相互作用量計測法等、大規模会話データから特徴を抽出する技術を開発し、情報の入出力のバランスや、相互作用を通じて生み出される語彙量などが、定量的に評価できるようになりました。得られた特徴に応じて、共想法を改良して、一人ずつに最も効果的な認知活動支援を提供する技術として展開し、健康長寿高齢者から、介護施設を利用する軽度認知機能障害者、中程度の認知症者まで、異なる認知特性を有する高齢者に適用することに成功しました。

[1] 大武美保子.介護に役立つ共想法−認知症の予防と回復のための新しいコミュニケーション,中央法規出版,2012.
[2] Mihoko Otake, Myagmarbayar Nergui, Takashi Otani and Jun Ota, Duplication Analysis of Conversation and its Application to Cognitive Training of Older Adults in Care Facilities, Journal of Medical Imaging and Health Informatics, Vol. 3, No. 4, pp. 615 - 621, 2013.
[3] Mihoko Otake, Motoichiro Kato, Toshihisa Takagi and Hajime Asama. The Coimagination Method and its Evaluation via the Conversation Interactivity Measuring Method, Early Detection and Rehabilitation Technologies for Dementia: Neuroscience and Biomedical Applications, Jinglong Wu (Ed.), IGI Global, pp. 356 - 364, 2011.
[4] 大武美保子.アプローチの方法2:コミュニケーション障害に対する方法「共想法」,認知症への多角的アプローチ,地域リハビリテーション,Vol.5, No.12, pp. 1049 - 1052, 2010.
会話支援ロボットの開発
Conversation Support Robot本研究の目的は、場の雰囲気を読み取り、適切な発言を選択可能な会話支援ロボットを開発することです。発話時間や表情など非言語情報の認識技術に基づいて場の雰囲気を読み取り、会話中の人間の発言など言語情報の利活用に基づいて適切な発言を選択可能とし、人と人との会話をより円滑に支援できるよい聞き手となるロボットが実現するかどうかを、実験的に検証しました。共想法の実施を通じて得られたデータに基づいて会話支援ロボットを開発し、会話を盛り上げながら発話量のバランスを取ることが可能であることを示しました。平均年齢94歳の健康長寿姉妹の会話をヒントに、面白い話をする機能、面白い話で笑う機能等を開発することに成功しました。

[1] Mihoko Otake, Myagmarbayar Nergui, Seong-eun Moon, Kentaro Takagi, Tsutomu Kamashima, and Kazuhiro Nakadai, “Development of a Sound Source Localization System for Assisting Group Conversation”, J. Lee et al. (Eds.): ICIRA 2013, Part I, Lecture Notes in Artificial Intelligence, Springer-Verlag, Volume 8102, pp. 532-539, 2013.
[2] Taichi Yamaguchi, Jun Ota, Mihoko Otake. A system that assists group conversation of older adults by evaluating speech duration and facial expression of each participant during conversation. In Proceedings of the 2012 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp. 4481-4486, 2012.
[3] “ぎんさんの娘”に学べ,おはよう日本, NHK,2013.3.4.
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